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新サービスや自主調査結果、関連する学問領域のコラムなどを掲載しています。

 前回、交渉の場面で相手を信頼するには勇気が必要となると述べた。この勇気を持つことができないばかりに、交渉は難しい局面に入ってしまうことも多いのである。どんな勇気が必要であるのか、以下のような場面を想定してもらいたい。少し現実離れした設定ではあるが、今回論じている「勇気」の特性を理解するのに役立つはずだ。  ジョンは仕事を失い、これからどうして暮らしてい…

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 今回は環境心理学における根本的な問いのひとつである「良い環境とは何か」について考えてみたい。ここで考えてみたいのは、個人ごとに持つ特定の嗜好性や環境のもつ付加的な意味ではなく、一般的に肯定的な気分・感情をもたらす環境というのはどんな環境なのかということである。  情動に関する心理学者のラッセルとワードは、肯定的な気分・感情をもたらす環境が2つに大別でき…

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 図1を見てほしい。地下鉄のプラットホームにある点状ブロックに、1本の凸状の線が加えられてある。この線は盲人がホームからの転落を避けるための配慮である。この線がないとどちら側がホームの端か分からないためである。    我々の身の回りには様々な配慮が埋め込まれている。図2は目薬の容器であるが、指に当たる蓋の側面部分が凹状になっており、開け閉めを気持ちよく行…

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 今回は、交渉場面で、ときとして無自覚のうちに直観的に働いて、我々の意思決定や言動を不合理な方向に導く心理的変数の代表として、交渉相手に対する「信頼」について考えてみたい。  初対面でまだまだ信頼関係のできあがっていない相手との交渉場面では、些末なことでも注意しながら話を聞き、合意内容を詳細に確認しなければならない。しかし、信頼関係のできあがっている相手…

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 自然観・環境観とは、その人にとって「自然環境というものがどういうものか」ということである。つまり、自然に対するイメージ・評価や態度の総体ということであろう。たとえば、かつて西欧においては自然とは人間と対立する偉大な畏怖と恐怖の対象であったと同時に、征服すべきものであり、かつ無尽蔵に利用してよい、することができるものとい自然観が支配的であった。こうした自…

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 先日、谷町線の南森町駅から天王寺駅に行くため、ホームに向かったとき図1の写真の行き先表示を見たとき、一瞬行き先の確認ができなかった。図1にある通り、天満橋と天王寺の最初の文字が天なので紛らわしかったのと天満橋と南森町の位置関係が直感的に分からなかったためである。じっくり見ると行き先表示板の真ん中に天王寺が表示されており、確認できたわけである。多分、天満…

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 交渉場面では、自分にとって重要な争点は相手にとっても重要であるはずだと言う思い込みが生み出す「固定資源知覚」の他にも、無自覚のうちに働いている認知メカニズムが、誰も望んでいない障害となって働いてしまうことがある。その代表格が「フレーミング(framing)」効果と呼ばれる認知バイアスである。フレーミング効果については、リスク・コミュニケーションに関連し…

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 前回、第40回「環境心理学で考えるための本(2):「環境をデザインする」ために」で「自然環境をデザインする」という書籍の紹介をしたが、今回はその余談を書いてみたい。  自然・natureとは本来は「そもそもの・人工ではない」という意味であり、デザインという人為的行為の結果とは本来相反(あいはん)する。しかし、自然・natureの言葉は、生物や生態系ある…

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 ある学術調査と会議のため、ドイツ、オランダ、オーストリアに行ってきた。大阪空港(伊丹)から成田経由して、ミュンヘン国際空港、スキポール空港、ウイーン国際空港を利用する機会を得た。  最初の大阪空港でまず間違えてしまった。10年前に利用しただけなので、初心者と同じである。図1にあるように出発ロビーの表示が目に入り、その手前にカウンターがあり、旅行客が並ん…

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 前回までは、行動経済学の分野で注目されている人間の不合理な意思決定の代表例を紹介してきた。今回はもう少し視点を変えて、交渉場面における人間の不合理な意思決定について紹介しよう。紛争解決や互いにとって有益な合意形成を実現するための方途を求めて、多くの社会心理学者が交渉場面の人間心理と行動の特徴を検討し、明らかにしてきている。  ひとくちに交渉といっても様…

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 前回、第39回「環境心理学で考えるための本(1):「構築環境の意味を読む」ために」は、理論としての環境心理学の思考法の一面が伝わる著作を紹介したので、今回は環境心理学のもう一つの側面である実践への関与への方法論に関する著作を紹介したい。 ●「自然環境をデザインする-環境心理学からのアプローチ」カプラン・カプラン・ライアン著  この本が扱う自然環境とは、…

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 36回で紹介したホテルの廊下と同様の例を見つけた。某特別養護老人ホームを訪問したとき、ここの廊下の両側面と両壁面の下部の帯に強い色が塗られていて、入居者を上手く誘導できるように配慮されていた。図2は台湾にある桃園国際空港のターミナル2にある廊下である。廊下の両側の黒い帯と床の真ん中に黒い正方形が45度傾けてデザインされている。これにより容易に旅行客を誘…

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 前回に引き続き、人間の不合理な行動の背後で働いている心理プロセスについて考えていこう。前回紹介したモンティ・ホール問題のように、誰もがうっかり行っている不合理な意思決定は、なぜそうなるのかさえ理解するのが難しいほど、無自覚のうちに直観的に行っているものである。確率論的には不合理でも、人間にとっては当たり前すぎるほど合理的なものであるところに特徴があった…

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 前回、第38回「環境心理学の教科書」を紹介したので、今回はより広く「環境心理学で考える」ための基本的な知識や態度を教えてくれる書籍のうち、比較的新しく入手しやすいものを数回にわたり何冊か紹介してみたい。 ●「構築環境の意味を読む」ラポポート著  環境心理学とは環境と人間の関係に関する専門分野だが、とくにその心理メカニズムを考えることが特徴である。つまり…

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 前回に引き続き、ラスベガスの観察について述べる。ラスベガスは砂漠の地に作られた人工の街である。従って、そういう土地柄か水に強い執着があるようで、前回でも述べたがメインストリートの至る所に噴水があり、建物中にも滝や水をたたえた大きなスペース(図1)がある。  あるホテルでは建物の中にイタリア・ベネチアの町並みを再現し運河を作り、そこでゴンドラを乗る体…

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 経済学的あるいは確率論的には不可解な(間違っている)人間の意思決定が、当の人間にとっては極めて自然で合理的な決定である場合が多いことについて論じている。今回は、1990年以降、一般の人々のみならず、多数の数学の専門家を巻き込んで論議を呼んだモンティ・ホール問題(Monty Hall problem)を題材にして考えてみたい。モンティ・ホールは、アメリカ…

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 ときたま環境心理学という検索ワードでこのコラムにたどり着いたという人や、環境心理学についての話を聞きたいという人がいるようなので、そういう人たちのために環境心理学に関する教科書を紹介してみようかと思い立った。  むろん私自身の考えといちばん近いのは羽生和紀著「環境心理学-人間と環境の調和のために」である。薄くて読みやすい、値段が安いという点では、現在世…

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 図1の写真は、私が博多に出張する際、よく使うビジネスホテルの室内である。机が壁面に対して直角に取り付けられ、その面積は広く、非常に使い勝手の良い机である。ビジネスホテルなので、ビジネスマンが主対象であるが、観光客も価格が手ごろなのでよく使われている。しかし、ビジネスマンが使うので、単に寝るだけではなく、そこで仕事をする空間でもある。そうした観点から見る…

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 今回からは、人間行動の不可解さについて考えていきたい。行動観察をより効果的に活用するために役立つはずであるし、他者の心を読もうとするときにも参考になるはずだ。その出発点として、行動経済学の話題を取り上げよう。  人間の経済行動には不可解なものが散見される。衝動買いはその代表であろう。また、自分の趣味には(他者から見ると魅力は乏しくても)惜しみなくお金を…

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 第35回「団地物語(2):自然監視再考」の結論で、自宅・自室のようなプライバシー欲求の高い環境を、公共空間を監視する路上の目として機能させるには「見ることはできるが、見られることのないデザインが必要なのかもしれない」と書いた。この、見ることはできるが、見られない状態の望ましさを主張している理論がある。見晴らし-隠れ家理論(prospect-refuge…

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