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2018年7月24日(火)

構造的にとらえる

第26回 温かいデザイン(2)

 今秋に出版予定の本(デザイン3.0の世界(仮)、海文堂出版)や学会(日本デザイン学会、日本感性工学会)で発表した、あるいは発表予定のデザイン3.0の世界について説明する。

(1) デザイン1.0
 1945年~1990年ごろの技術中心時代のデザインである。この時代の製品はマズローの生理的欲求と安全の欲求を主に満たしていた。生理と安全の欲求を充足させるとは、機能に重点を置いた基本的なデザインといえる。

 (2) デザイン2.0
 1990年~2005年ごろの人間中心デザインの時代である。より生活が豊かになり、マズローのいう所属と愛の欲求や承認の欲求のレベルに要求が高まってゆくと、より人間の視点に重点を置いた人間中心デザインの考え方がでてきた。ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)による人間中心設計(HCD、 Human Centered Design)の規格の制定や2004年ごろ生まれたSNSは承認欲求に対応した現象として捉えることができる。

(3) デザイン3.0
 21世紀に入り、マズローの自己実現の欲求レベルに到達した。そのため、ハードからソフトにデザインの力点がシフトし、ユーザ体験に焦点を当てたユーザエクスペリエンス(UX、 user experience)デザインが注目を浴びるようになった。マズローの欲求五段階説の生理的欲求から最後の自己実現の欲求までの流れを製品開発やデザインの観点から考察すると、その重点がハード系からソフト系にシフトしているのが分かる。このソフト系にウエイトを置き、人々の心に訴える製品はサービスデザインへと進化してゆく。このような人の心に訴える、本質的な価値中心のデザイン3.0の時代は、2005年ごろから現在に至っている。

 ところで、20世紀は無駄を排除し、効率を追求した時代でもあった。モノづくりだけでなく、我々の生活も効率という視点で概観することができる。分かりやすい例でいえば、建築の世界では、一例として鉄骨とガラスでできた無駄のないモダンデザインが高い評価を得ていた。この動きに反対していたのが、建築家のロバート・ベンチューリであり、浦辺鎮太郎であった。また、この効率を目指した時代に反発し、自然回帰を訴えたヒッピー(Hippie)の人々もいた。しかし、21世紀になり、様々な生活が社会制度として、徐々に許容されるようになってきている。インターネットの発達で田舎でも仕事ができるようになり、副業が許容され、自分のライフスタイルに合った生活が可能となった為である。20世紀の効率中心、モダニズムのデザインを冷たいデザインとし、心が和むデザインを温かいデザインと定義する。詳細の定義は次回以降で紹介する。 下図のリバーサイドミュージアムとお地蔵様のデザインを見てほしい。どちらが温かいデザインであろうか。
 
 21世紀に入り、人々の生活が以前と比べ豊かになり、マズローのいう自己実現の時代になると、若い人を中心に合理主義を超えた自分の価値観に基づいた行動をとる人が増加しているようだ。NPO活動の隆盛やソーシャルデザインの活発化などの現象がそれを裏付けている。この動きが温かいデザインと符合し、デザイン3.0の基盤となっている。この温かいデザインが今後のデザイン運動やモノづくりの主流になるとは思えないが、様々なところでその萌芽を見ることができる。建築では木を多用したデザインが様々なところで見られるようになり、製品デザインの方でも、表面が漆風のエアコンの販売や家電メーカのデザイン部門の一部を京都に移転するなど、モダンデザインを脱するための試みが起きている。

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