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2018年6月5日(火)

メンバー&専門分野紹介

"型のマネだけにならない"ノウハウを可視化して現場に活かす - スキル・マインドの両面から -

 今回は行動観察リフレーム本部のメンバーの中でも、様々なビジネスの現場において、生産性向上や技術伝承などのプロジェクトに携わってきた3名に、これまでのプロジェクトやプロジェクトにおいて気を付けていることなどについて話を伺いました。


――みなさんは、これまでどのようなプロジェクトを担当されてきましたか。

葛原 昌司(以下「葛原」):
 フィールドとしては、化学や鉄鋼などの工場内やガス・道路・鉄道などインフラ系の現場に関わる案件などをよく担当してきました。人が作業をしている現場での、生産性の向上やヒューマンエラーの削減などをテーマとしたプロジェクトが多いです。その他にも海外の展示会での案内サインの改善、店舗・施設のフロア改善など様々な種類のプロジェクトを実施してきました。

久保 良太(以下「久保」):
 私も葛原さんと同じく、現場に行って観察をするプロジェクトが多いです。例えば、営業ノウハウの可視化などのテーマも担当しています。他にも職場風土の調査や、海外の自動車ユーザーの価値観を探るプロジェクトなどにも参加してきました。

嶋田 倫博(以下「嶋田」):
 最近はエネルギー業界の現場で観察をするプロジェクトに多く携わっています。ただそれに限らず、駅構内や商業施設のサイン表示を改善するプロジェクトなどにも関わってきました。


―― みなさん様々なプロジェクトに携わりつつも、共通点としては、生産性の向上やヒューマンエラーの削減、ノウハウの可視化といったテーマでクライアントの作業現場に入るプロジェクトが多いといえそうですね。他に何か3人の共通点は何かありますか。

久保:
 共通点としては、3人とも「認定人間工学専門家」という資格を持っています。

―― 人間工学とはどういった学問なのでしょうか?

葛原:
 人間工学は、生活しやすい環境や働きやすい職場を実現し、安全で使いやすい機械や道具をつくることに役立つ実践的な科学技術です。人間の身体的特徴から、心理学的側面など幅広い領域にまたがっています。私たちはそれぞれ専門が異なっていて、私は心理学になります。

久保:
 私は聴覚や視覚相互作用を専門にしていました。いずれも人間工学の分野の一部です。

嶋田:
 私が研究していたのはロボット。ロボット自体は人間工学ではないですが、ロボットの研究をするときに、視覚に関する専門性が必要だったり、人とロボットのコミュニケーションという面で心理学にも関わったりしてきました。

―― 人間工学はビジネスにどのように生かせるのでしょうか。

葛原:
 たとえば、サインの改善などで使いやすさ・見やすさを向上させるときには、文字の大きさ、角度、明るさなどが重要になりますが、人間工学には関連する多くの知見があります。システムの利用に関する課題の洗い出しにそういった知見を使うこともありますし、現場での課題探しのヒントになることもあります。

―― みなさんこれまで様々な現場を経験されてきたと思いますが、現場ならではの面白さというのはあるのでしょうか?

嶋田:
 普段行けない所に行ける、という楽しさはあります。日常生活では外部から見ている現場の裏側に入って、どんなことが起こっているかを見られるのはワクワクします。

久保:
 確かに。現場に行ってみないとわからないことは多いですね。例えば、トンネル工事の現場に行ったときも、雨が降ると全く仕事にならないとか、想像よりもはるかに虫が多いとか、初めて知りました。他にも服装など様々なルールが現場ごとにあり、驚くこともあります。

葛原:
 大変な仕事をされているなあと思ったことは多くあります。例えば真冬の道路での除雪作業。一晩中シフトを組んで道路状況をモニタリングし、道路の凍結などによる通行止めを防ぐために除雪車などで作業していまます。

――さまざまな現場や仕事があって、そのそれぞれに技術やノウハウがありそうです。

葛原:
 こういった技術・ノウハウは現場の人の暗黙知となっていることが多いです。だからこそ技術伝承は難しい。

嶋田:
 高齢化もあり、技術伝承は多くのクライアントが悩んでらっしゃいますね。


――そういった技術・ノウハウを可視化するのには、どのような手法をとるのですか。

久保:
 行動観察とインタビューの両方を使うことが重要です。現場の行動を観察して、その理由や背景をインタビューで深掘りしていきます。無意識的に行っている行動や当たり前だと思っている行動も、現場を観察すればこそ把握できます。

葛原:
 ただ、いくら技術やノウハウを可視化しても、それを現場で活かせないと意味がないです。単純にこんなノウハウがあったと報告するだけでなく、そのノウハウを現場で活用してもらえるようマニュアルや研修に落とし込みます。ですので、調査の段階からどうすれば現場に活かせるかを念頭に置いています。
そして、マニュアルや研修も私たちだけで作るのではなく、クライアントの現場をよく知る方々と一緒に考え、ディスカッションすることで、より現場で活用されるものとなっていきます。

―― ここでいうノウハウとは、こういう時にはこうするというオペレーションがまとまったものなのでしょうか。

葛原:
 オペレーションだけでなく、考え方や意識、心持ちといったところも非常に重要です。意識面を無視して型だけマネしてもうまくいかないことが多いです。優秀なベテランがどのような意識を持っているのかも含めて可視化していきます。

――そういった意識面はどうやって引き出しているのでしょうか。

久保:
 観察をするなかで、熟練者とそうでない方の意識の違いに気づくことがあるので、そのようなときに深掘りして聞いています。

葛原:
 雑談のときに引き出せることが多いかもしれない。一緒に車で移動する際の何気ない一言の中から気づくこともあります。他にも事前の準備・工夫などから見えてくることもありますね。

――現場の観察について、気をつけていることはありますか。

葛原:
 プロジェクトを円滑に進めるためにはやはりコミュニケーションが大事になります。観察の対象者を選んでいただくときにも認識に齟齬があると、目的に沿わない対象者が選ばれることもあります。

嶋田:
 対象者に対するコミュニケーションも非常に重要です。「何かチェックされるのでは?評価されるのでは?」という意識だと、普段通りの行動が見られなくなります。そのため、プロジェクトの意図や評価には影響しないことなどを丁寧に伝えることを意識しています。他にも現場の作業の邪魔にならないよう、立ち位置なども確認の上、観察をしています。

――現場に入る際は、どのようなことを意識していますか。

嶋田:
 当たり前ですけど、事実をきっちり取ってくること。クライアントとのディスカッションの土台となるものなので、事前にいくつかの観点を設定し、それらの観点で観察ができているかを意識します。

葛原:
 クライアントのゴールや調査目的はしっかり意識しています。例えばヒューマンエラーの削減では、現場の不安全行動を拾うだけではなく、不安全行動をなくすために、なぜそれが起こっているのかを明らかにしないといけない。理由にあたりをつけながら、自分でも納得できるまで、観察・ヒアリングを重ねていきます。持って帰って考えようではできない。その場で拾うことが重要です。

――観察する人によって、現場で気づく事実は異なるものでしょうか。

嶋田:
 社内のプロジェクトで、3人のメンバーが全く同じテーマでそれぞれ観察したときにどのような違いがあるかを調べたのですが、それぞれメモの取り方も違いましたし、取ってくる事実も3者3様でした。もちろんベースとなる気づき力は持っているのですが、これまでの経験や持っている観点がそれぞれ違うので、集めてくる事実も違ってきます。誰が正解というものはないと思います。

――現場で気づきを得るために、クライアント業界や現場についての知識は必要なのでしょうか。

葛原:
 近年、クライアントの要望も高度化してきているので、専門知識が必要となる現場も多くなっています。事前に予備知識の習得が必要だったり、本調査の前のプレ調査として現場を把握する必要があったりもします。

――クライアントからよく求められることは何かありますか。

葛原:
 やはり結果(答え)を求められることは多いです。ただ、これをやったら生産性が上がる、ヒューマンエラーが減るという特効薬はないというのが正直なところです。現場でいろいろな人が動いているのでそんな簡単な話はありません。

嶋田:
 IoTの技術などもどんどん活用していけばいいと思いますが、結局その技術を使うのは人間なので、技術の導入だけで解決するのは難しいです。

葛原:
 表面的なことだけでなくモチベーションなども含めて、現場の方々の納得を得ながら進めていかないと、難しいと思っています。

 現場改善の指標となる数値が上がるかどうか、私たちが確約することは難しいのですが、私たちが出来る部分をしっかり説明してご納得いただいています。

 私たちは現場の事実を起点としてクライアントとのディスカッションを重ねて施策を出しているので、ゴールに向けた方向性から大きくズレることはない、と思っています。

――そういった施策の運用や検証するところまで一緒にすることもあるのでしょうか。

久保:
 はい。私たちも施策を検証し、次のPDCAを回しながら、ゴールに向かって一緒に進めていく形が望ましいと思っています。

葛原:
 とりあえずの答えではなく、長いスパンで段階的に取り組んでいくことをご一緒できればと思います。

――これまでのプロジェクトを今一度振り返ると、どうでしょうか。

葛原:
 失敗から学ぶことが大きいかもしれません。まだ蓄積が少なかった頃、手探りでやることも多く、リスクに気づかず失敗することもありましたが、そこから学んだことが多いです。

久保:
 実査後、結果をまとめているときに仮説が出てくることもあるのですが、その仮説に関連する事実を、実査中に見たり、聞いたりしておらず反省することもあります。そういった反省が次に生きるということがあると思います。

葛原:
 同じような案件でも同じものは一つとしてない。似ている現場であっても人・場所・時間が変われば全て違うこともあります。なので、心構えとして1度やっているからといっても安易には考えられないですね。

 個人的な感覚では100点満点のプロジェクトはそうそうなくて、最終的にクライアントに喜んでいただいていても、プロセスで反省すべき点があったりします。だからこそどのプロジェクトでも難しい、そういう仕事だと思っています。

――今後こんなプロジェクトに携わってみたいというのはありますか。

嶋田:
 知らない所、観たことないものにもっと触れたいですね。

葛原:
 プロジェクトの傾向も変わってきているので、それに合わせて自分も変えていかないといけない。例えば、業務システムに関するプロジェクトだと、観察した結果が今後どのようにシステムに組みこまれるかを知らないとできない。自分自身も更新しながら、自分たちの強みを発揮していきたいと思っています。

――最後に、この仕事をしていてよかったと思ったことはありますか?

久保:
 入社してすぐ、ある専門職用の作業着の改善プロジェクトに携わり、コンセプトのイラストまで作成したのですが、最終的に特許を取るまでになりました。実際に携わったことが、モノとして形になったことがうれしかったです。

嶋田:
 クライアントの中にはお忙しい方も多いのですが、その忙しさが少しでも解消されたという声をいただいたときはすごく励みになりました。

葛原:
 クライアント、観察の対象者(現場の方)、そして社会。この3者が良くなると、自分の携わった意味があると思っています。ですので、プロジェクトの後に「良くなった」と聞くととてもやりがいを感じますし、今後もそれを目指していきたいと思います。



 以上、いかがでしたでしょうか。本記事について、ご感想・ご要望などございましたらお気軽にお寄せください。お問い合わせはこちら。

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