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2016年9月1日(木)

深めるサミット

「リフレーム」について考える

深めるサミット第2回は「リフレーム」がテーマ。前回は「インサイト」をテーマに、その定義などを深めていきました。今回は「リフレーム」について、その重要性や起こし方、さらにリフレームを起こすためにどのような素養が必要かについて深めていきます。

――「リフレーム」について、行動観察研究所では「新しい仮説、新しい価値を生み出すために、それまで常識とされていた枠組みを新しい視点、発想で考えること」と定義されていますが、まずは「新しい仮説を生むためのリフレーム」から、スタートしましょうか。

松波 晴人:大阪ガス行動観察研究所 所長(以下「松波」)
「仮説」のリフレームは、因果関係のリフレーム。問題の捉え方のリフレームと考えてもいいかもしれないね。「Xが原因でYが起こっていた。」と思っていたけど、「Zが原因でYになっているんじゃないか?」となることですね。

川口 明日香:行動観察研究所 プランナー(以下「川口」)
これまで持っていた「仮説」は何となくしっくりきていなかったけど、行動観察をして原因がクッキリわかった!というのは、けっこう多くのクライアントが言ってくださいますね。

松波
問題の捉え方を間違えるというか、問題の本質が別のところにあるというのはよくあることなんですよ。

川口
だからこそ、現場の事実をちゃんと把握しないといけないですよね。上層部の方に調査の報告したときにも現場の事実に対して「あぁ、なるほど!」という事が多いです。現場から離れている人ほどその事実は新鮮で、思い込みがリフレームされるんでしょうね。

原井 志保:行動観察研究所 研究員(以下「原井」)
現場から離れている人もそうだし、現場にいる人も見慣れた風景だから見えていないというのもありますよ。「言われてみたら本当にそうしていた。」とか、「ずっと現場に居るのに気付いていなかった。」とかもよく聞きます。

松波
そういう意味で言うと、リフレーム起こすのに大事なのは「意外なファクト」なんじゃない?

原井
そうですね。私たち(行動観察研究所)から見てではなく、クライアントから見て意外なファクト。

安松 健:行動観察研究所 研究員(以下「安松」)
リフレームって、客観的というより、主観的なものですよね。つまりフレームを持っているのは、クライアントだったり、業界だったりするわけで、他の業界では当たり前のことであってもその業界にとってはリフレームだったりする。私たち(行動観察研究所)が既に知っていることでも、クライアントにとってはリフレームだったということもありますよね。


――同じ事象でも、様々な捉え方がありますよね。

松波
たとえば、結婚について「結婚は人生の墓場だ」と捉える事もできるし、「これで新しい人生が始まる」と捉えることもできますよね。でも、やっぱりネガティブに捉えるよりもポジティブに捉える事をリフレームと呼びたいですね。

安松
「リフレーム」はとても大事な言葉ですよね。ただ単に、「何か新しいモノ」とか、「何か新しい気づき」とか「何か新しいアイデア」というだけだと、「改善」のように既存のフレームのまま変わらないものも含んできますからね。


――「改善」とは明確に違いがあるんですね。

安松
改善は、仮に方法は思いつかなくとも、方向性はわかるものですよね。より早く、とかより軽く、とかより小さくとか。

神田 智範:行動観察研究所 研究員(以下「神田」)
改善は今ある考えや見方の延長線上で良くしようという活動なのに対して、リフレームはまったく違う視点や見方や気づき、発見も踏まえて、方向性や価値を打ち出す、という違いですかね。


――新しい「価値」を生むためのリフレームというのはどういうものでしょうか。

松波
「価値」のリフレームは、「新しい土俵」を生むっていう取り組みですね。例えば「音質の良いオーディオ」というフレームではなく、「外で音楽を楽しめる」というフレームで「ウォークマン」という新しい土俵を作る、ということですね。

原井
でも「ウォークマン」のように新しい土俵を作るときには、「そんなの誰が買うのか?」と言われて、アイデアがつぶれてしまうこともありえますよね。

松波
うん。ありえる。「それ、前やったことある」とか「これは開発部隊が多分NOと言うだろうな」というように、あれもダメ、これもダメとバツを付けていくと形にはならないでしょうね。

安松
リフレームされたものって、既存のフレームから見ると欠陥だらけになるわけじゃないですか、先程のウォークマンだったら、「音質が悪いのはダメに決まっているだろう」とか。とすると、行動観察研究所としても、リフレームされた「アイデアを出す」だけじゃなくて、クライアントも一緒にプロジェクト全体でリフレームを「起こす・実践する」ようにしないと、本当にリフレームした事にならない。


――リフレームによって出てきたアイデアの妥当性を測ることはできるのでしょうか。

川口
モノとかサービスとか具体的な形に落としこまれないと妥当性をはかるのは難しいでしょうね。新しいアイデアであればあるほどイメージが出来ないから定量的に検証しにくい。

松波
あるメーカーで聞いた話ですが、メンバーが出したアイデアやコンセプトをアンケートで80%以上の人が「欲しい」と言わないとプロトタイプを作る事が出来ない。それを通り抜けてプロトタイプ作って、また100人に見せて何%以上がOKって言わないと出せないらしいんです。でもそのやり方を始めてから商品が面白くなくなったと言ってましたね。

一同
(笑)

川口
尖がったモノが出ないですよね。

松波
リフレームで新しく出た価値を検証するのはすごく難しい、という話でしょうね。既存のやり方で評価しても正確じゃないですからね。

川口
あとは、数打てば当たるじゃないけど、百発百中と思わない度胸で商品として出しちゃうか。

神田
ちゃんとトライ アンド エラーが出来る体制や環境が必要でしょうね。


――どちらかというと商品・サービス開発という分野でのリフレームというのはイメージしやすいのですが、例えば作業現場のようなフィールドでのリフレームってどんなものでしょうか。

松波
例えば工場でヒューマンエラーが多く発生していて、管理者は従業員の気合が足りず、規律が緩いからだと思っている。それで観察してみたら、実際は従業員の内的モチベーション・やりがいが不足しているのが問題の本質だった。だから規律を厳しくするのでなくモチベーションが上がるような施策しましょう、というような場合は、“現場“でのリフレームと言えるでしょうね。

神田
リフレームが求められる業界や業種はすごく幅広いですよね。

松波
どんな分野・業界でも求められるものなんじゃないかな。さらにいうと我々ひとりひとりの人生に於いても必要なんじゃない。

一同
(笑)


――リフレームの種類もいろいろありそうです。

松波
観点さえあればリフレームは起こせるから、観点がいっぱいある限りリフレームって無限にあるんだよね。ただ、妥当性があって、ちゃんと効果がでるものは限られていると思いますけどね。リフレームは簡単と言えば簡単で、当たり前にある要素を全部否定していくと、パッとリフレームが起こるんです。たとえば、レストランに絶対あるものはなに?

原井
お皿

川口
塩・コショウ

神田
机・椅子

安松
コックさん

松波

じゃあ、それが無いレストランを考える。皿が無いレストラン。難しいけど、実現できないかな。
塩・コショウの無いレストラン。これはもうあるかもしれない(笑)。机のないレストラン。立ち食いでも机はあるな。机もなかったらどうなるかな?
コックさんがいないレストラン。全部電子レンジでチンしたものを運んでくるだけ。ここまでいくとイノベーションだね。もうそれを実現しているレストランチェーンもありますね。

川口
たしかにイノベーションですよね。

松波
いくらでも、発想できる。

安松
私は、リフレーム(Reframe)の「Re」が大事だと思うんです。Re-Frameなわけです。フレームを作り直すということが明示されているわけです。

よく既存の枠組みの打破とか言うじゃないですか、しかし、厳密に言えば、それだけでは枠組み(フレーム)を壊すという意味しかない。破壊するだけでは本当は新しいものは生まれず、破壊されてバラバラになった残骸が残るだけです。そうではなくリフレームという言葉には、 既成概念を打破してもう一度新しい枠組みを作り直すという意味まであるわけです。 ただそうは言ってもまず打破することも重要で、今やったレストランの例みたいに要素を挙げて、勇気をもって「消す(壊す)」っていう苦しさを経験しないと、新しいものはなかなか生まれないですよね。壊すことは大事、そして壊した上で再構築するというのがReframeですよね。


――リフレームを起こすために求められる事、必要な素養とは何なのでしょうか。

松波
何が必要でしょう? 素質、態度、マインドセット、スキル、知識・・・

安松
それは、全部必要ですよね。

神田
まずは、事実を、決めつけや偏った視点じゃなくて、ありのままに受け止められることが必要だと思います。

安松
「意識的」にリフレームしようと思うなら、今のフレームが分かっていないとリフレームができないんじゃないかな、と思うんですよ。お笑いを例にして考えると、「意図的」にボケようと思ったら、常識的にはこう返す、というフレームを分かった上で、それを外すからボケることができるわけで、常識=現状のフレームをしっかりとらえているからこそできるわけですよね

松波
途中からはそうかもしれないけど、最初は違うかも。「何か違和感あるけど、なんだろう?」っていうのが最初のとっかかりな気がする。最初からこれはこうだからリフレームしよう!とはなってない。

安松
違和感を乗り越えるというか、ほったらかしにしないというか。

松波
違和感は大事ですよ。普通、違和感からすぐに離れようとするから、適当な理由を付けたり、YesかNoで処理しちゃう。YesでもNoでもない、よくわからないけど気持ち悪いというのをそのまま受け止めるのは大事ですね。

川口
私の感覚なんですけどね、「ホップ→ステップ→ジャーンプ!」って出来る人。というイメージがあります。「ホップ→ステップ」というのは事実を集めてきて、分析するという事で、そのあとに「ジャーンプ!」って飛べる人がリフレームできる人。というイメージ。集めてきた事実と分析したこと、感じた違和感とか、今までに持っていた引き出しを使って、「あっ、こっちじゃないか?」と思って、思い切って「ジャンプ」する。すると、ぱっと新たな扉を開けられるようなイメージを私は持っているんです。


――この「ジャンプ」するのはクライアントもですか?

松波
多分、クライアントを抱きかかえながら「ジャンプ!」(笑)

川口
クライアントの手をとって、最後「はい」ってやさしく着地する。

原井
そうですよね。新しいことをするのはすごく不安があると思うんです。クライアントがイノベーションを起こすまで、一緒に寄り添って、背中を押していけるようにサポートをしたいですね。

松波
これは新しい理論。「ホップ→ステップ→ジャンプ理論」これは新しい!

一同
(笑)


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