BLOG

ブログ

2016年6月30日(木)

深めるサミット

「インサイト」について考える【前編】

今回より新企画「深めるサミット」をスタートいたします。本企画では毎回テーマを設定し、その重要性・価値・意味などについて「深める」ために行動観察研究所のメンバーがディスカッションをします。初回のテーマは「インサイト」。行動観察研究所のメンバー6名でディスカッションし、「インサイト」を「より実感のこもった表現であらわしてみる」という試みを行いました。

 

インサイトのイメージ


 ――「インサイト」という言葉について、普段研究所では”本質的なニーズや課題”と表現していますが、広がりのある言葉なので各企業で使われる場合にそれぞれ異なったニュアンスで表現されることも多いと思います。そこでインサイトについてもう少し掘り下げていきたいと思います。クライアントとのコミュニケーションやマーケティングの業界で、インサイトという言葉はどのようなイメージや意味合いで使われていることが多いですか。

林田 将史:行動観察研究所 プランナー(以下「林田」)
これが本質ではないかという根本的な課題だと捉えられているように思います。ただコンセプト的なものと捉えているクライアントも多いです。例えば「インサイトからアイデアを出すんですよね」というクライアントの発言を聞くと、インサイトのことを、落とし込まれた「提供価値」や「コンセプト」と捉えてらっしゃるなと感じます。

葛原 昌司:行動観察研究所 主任研究員(以下「葛原」)
一般的なイメージでいうと、まだまだぼんやりとしているんじゃないかと思います。私としては、調査などでわかった事実をまとめたときにこういう考え方ができる、つまり「複数の事実を解釈できるキーになる考え方」がしっくりくるのですが。

有馬 光美:行動観察研究所 研究員(以下「有馬」)
一言でいうと「深い洞察」。もう少し具体的に言うと「深く洞察して見つけたこと」みたいな感じで捉えられていると思いますね。

村田 仁美:行動観察研究所 プランナー(以下「村田」)
その「深い」についてですが、行動観察などを依頼いただいているクライアントは、様々な事実を俯瞰して得られた「インサイト」に価値を感じていただいていると思います。1つの事象から得られたものではなく、現場の事実を全体的にみて得られるものというイメージ。だから「深い」のではないでしょうか。

石原 由紀子:行動観察研究所 プランナー(以下「石原(由)」)
インサイト = 洞察 と訳されていますが、私はそれに違和感があります。直訳から受けるイメージとマーケティングで使われているインサイトの概念は若干乖離があるんじゃないでしょうか。

林田
あと、クライアントからは新奇性を求められますね。例えば、高齢者が持つ「他者の役に立ちたい」というインサイト。今までにない気づきだからこそ高齢者にサービスを提供するという発想ではなく、高齢者がサービスを提供する側になる場を作るという、発想が生まれる。今までとは、違うものを見つけないとマーケティング上、意味がないんですよね。

石原 妙子:行動観察研究所 主任研究員(以下「石原(妙)」)
クライアントによっては、インサイトは「仮説」というより、「事実」であるという考え方のところもあります。浮き出てきた「何気なく見えるがフォーカスすべき事実」がインサイトという考え方です。

葛原
いずれにしても「インサイト」はすごく納得感が求められると思います。そのためには、思い付きではなく事実をベースとしていることが重要だと思います。

松波 晴人:大阪ガス行動観察研究所 所長(以下「松波」)
インサイトは事実なのかというところをクリアにしたいんですけど、事実の場合もあるけど、事実じゃない場合も結構あるんじゃないかと思います。
「やたらお菓子を食べる人がいる」というのは事実なんですけど、「お腹空いているからじゃないか」というのは、洞察に近いと思います。それは本当かどうかわからないんですよね。事実の場合ももちろんあると思うけど、違う場合もあるので、インサイトは必ずしも「事実」とは言えないんじゃないかと。イライラしていたからかもしれないし(笑)

有馬
事実かどうかはどちらでもいい気がします。説得や納得ができるのであれば、それが事実であろうが解釈であろうがどちらでもいいのかなと。

松波
まあ推論だから、正しいかどうかはわからないんですよね。推論というのは仮説なのでこういう風に解説したらうまく説明できるんじゃない?というもの。

石原(妙)
説得力のある解釈をするために、(対象者の)家に行ったりしたら、どういう環境にいるのか、どういうコミュニティに影響を受けて、何を優先しているかなど、その人の取り巻くものを理解できますよね。その上で、なぜその行動をするのかの説明をつけるからこそ、仮説ではあるけれども説得力のある深い洞察になるんじゃないかと。

松波
さっきおっしゃってた「新奇性」というのは大事で、つまりそれは今までわかっていなかったってことですよね。新奇性はインサイトと呼ぶときの条件だと思うんですよね。「そんなのみんなわかっているよ」というのはインサイトじゃないよね。

村田
クライアントはやっぱり新しいものを求めていると思います。

石原(由)
インサイトというのは、リフレームされた結果出てくるものとも言えそうですね。

松波
そうそう。世間的にはそうじゃないかもしれないけどね。前からわかっていることもインサイトと呼んでいる場合もありそう。これまでにあった解釈でもいいという感じで。世間的には古いものも「インサイト」とみなすかもしれないが、クライアントにとっての価値を考えると新しいものがいい。

 

インサイトが必要とされる背景は?

 

林田
いずれにせよ各企業は「インサイト」に、すごく期待をしていますよ。

有馬
それこそ魔法の杖みたいに。

林田
インサイトが出たらそれで新しいものができるみたいな。

松波
そこに世の中のニーズがあると言えそうですね。

――インサイトがなぜ必要とされるのか、その背景にはどんなことがあるのでしょうか。

林田
他社より先のことをやらないといけないからでしょうね。(インサイトは)イノベーションのタネになるものだから。あと、インサイトがあると、組織としての方向性というか狼煙になるんじゃないかなと思う。そこから商品やサービスを考えるという意味で、重要なものだと思います。

有馬
小手先だと、消費者が動かないようになってきたと思います。インサイトから導かれたものじゃないと、売れなくなったり、使われなくなっているんじゃないかな。

葛原
結構世の中いき詰まってるんじゃないでしょうか。いろんなアイデアも出し尽くしたという感があって、いろんな商品が横並びで同じようなものが出てきて、差別化もできなくなってきている。その中で生き残るために、何かがないと生き残れない。

有馬
超成熟社会だから。

葛原
これは商品の開発に限らず、例えばヒューマンエラーなんかでもそうなんです。いろんな対策をやってきたけれども、でもやっぱりなくならないという中で、次に何をやっていいかわからないということが起こっているんです。

林田
クライアントはこれまで既存のものの改善をやり続けてきて、でも「それだけじゃだめだ」となってきてると感じます。改善は重要なんだけれどもそれだけで業績がぐっと上がるというものではなくて、継続的にやっていく活動。
むしろ全く違うことをしなくてはいけないという状況になっているんでしょうね。ご依頼いただくテーマとしても「次世代○○」といったような、先を見すえたテーマが増えてきている。そのためには今まで気づかなかったものを見つけることが重要になっていきます。

石原(妙)
昔はモノがなかったので、例えば「洗濯機があると楽になる」というだけで売れていて、自分が何をしたいなどのプラスアルファの部分はあまり関係がなかった。
それが全部満たされた次に買ってもらうには、もっとお客さまの心に響く要素を加えないと売れない。だから、お客さまに聞いても出てこないような潜在的なニーズをとらえて、ものを作っていくことが重要だと思います。

村田
現場の改善などでも、きっちり本質的なところを把握しておかないと、現場に受け入れられないソリューションとなって逆効果になることもあります。そういう意味では、やはり重要だと思います。

松波
目指すべき旗みたいなものですか。

村田
そうですね。旗でもあるし、目印みたいなものでしょうかね。

石原(由)
今まで、企業の視点だったのをユーザー視点に変えるという意味で重要だと思います。企業は技術を重視し、技術で競争・勝負してきた。でもユーザーがそれを望んでいるのかという視点は抜けていた、というお話をよく聞くようになりました。

松波
「ジワジワ」と「バッサリ」。
ジワジワとシェアが減っていくのもあると思うのですが、バッサリ減るということもあるんですよね。市場が成熟したからじわじわ売れなくなるという場合もあれば、新しいインサイトを基にした提案にバッサリとシェアを取られるということが起こるので、企業は危機感を持っているんじゃないかな。ジワジワならまだいいんですけど。

石原(由)
中国などでも今まで売れていた製品が急に売れなくなると聞いたことがあります。

石原(妙)
他の会社のほうがお客さまに響くものを作ってたってこと?

石原(由)
そうだと思います。

松波
ゲームチェンジが起こる可能性あるんですよね。ビジネスをゲームとすると、インサイトを持った企業が新しいことをやると、ゲームのルールが根底から変えられちゃう可能性があるんです。

林田
家電とかそうですよね。掃除機とか洗濯機とかの国内製品は機能がたっぷりあるけど、ほとんど使われないですよね。海外製のものは、機能が少なく、日本の製品より高い。でもデザイン性などで優位性があって売れている。やっぱりお客さまの感情を掴まないとモノが売れないんですね。モノがそれだけ選べるという時代なんでしょうけど。

石原(妙)
ここからは想像ですけれど、1つの商品単位で勝負をしていると大変なので、ブランド力やロイヤリティを高めないといけない状況になっているんじゃないでしょうか。そのためにお客さまのインサイトに寄りそったモノをつくることや、インサイトを踏まえていますという姿勢はますます大事になってきていると思います


前編はここまでです。
後編は、インサイトの今後の展望、そしてインサイトとは何かについて、よりボルテージを上げてディスカッションをしています。後編はこちら。

ブログの更新情報は
Facebookでもお知らせしています

キーワード