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「行動観察と社会心理学」の記事

 前回、「やらされ感」や「指示待ち」の態度から脱却して、前向きに仕事に取り組むには、職場を「作業の場」ではなく「学習の場」として認知するように成員のフレーミングをシフトさせることが重要な鍵を握ることについて紹介した。こうしたフレーミングのシフトは、失敗から学ぶことを大切にして、プロアクティブに仕事に取り組むことの促進につながると考えられるからである。では…

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 組織の中間管理職の方々にお話をうかがう機会があるたびに、「やらされ感」で仕事に取り組んでいる部下が多いと嘆く声をよく耳にする。「指示待ち族」の多さを嘆く声も同様に聞こえてくる。受け身の姿勢で働く人の多さや増加を感じることは、管理職にとっては悩みの種のようである。  「やらされ感」の問題は、組織成員一人ひとりの職務に取り組むモチベーションの低下や精神的ス…

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 今回は、組織において、人々がお互いにとって関連のある考えや感情について気兼ねなく発言できる「心理的安全(psychological safety)」は、どうすれば構築することができるか考えてみたい。ただ、その前に、そもそも心理的安全の構築を必要とする組織はどのくらいあるのだろうか。もしほとんどの組織で心理的安全が十分に確保されているというのであれば、そ…

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 前回まで、互いが自己の利益に執着し、異なる意見や価値観を排除しあってばかりでは、共貧社会を招きかねないことを社会心理学の研究知見に基づいて説明してきた。共存共栄の社会を築いていくためには、異なる意見や考え方の者同士でも、気兼ねなく自分の意見を主張しあえる多様な考え方が許容される環境が必要になる。これは、社会のような大規模なレベルだけでなく、職場や家庭と…

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 前回、前々回と論じてきたように、自国中心主義の行き着くところは共貧社会である可能性が高い。このことは理屈ではわかっていることである。誰もが自分の利益だけを追求して利己的に振る舞えば、世の中は悲惨な状況に陥ることは、理を尽くして説明されるまでもなく、直感的にも推察できるところであろう。それゆえ、個人として行動する時、我々の心には、他者と協力しようとする動…

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 前回、自国第一主義を掲げて行動すれば、周辺国家も次々と自国第一主義で行動することを誘発して、結果的に意図せざる結果として共貧を招くことになりかねないことについて紹介した。これは由々しきことであり、何とか防がねばならないが、問題はそこだけにとどまるだろうか。  自国第一主義が世界的に隆盛してきた背景には様々な要因が挙げられているが、重要な要因のひとつに、…

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 世界的には、自国第一主義が声高に叫ばれ、支持を集める傾向が強まっているといえるだろう。イギリスのEU離脱を決めた国民投票の結果、アメリカ大統領戦でのトランプ氏の勝利は、それを象徴する出来事といえる。オランダ下院選挙においても極右政党の自由党が第一党に躍進するのではないかと注目されていたが、こちらはそれほどの勢いを示す結果にはならなかった。とはいえ、今後…

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 ドラッグストアで風邪薬を買うと、ほぼ間違いなく「ポイントカードはお持ちですか?」とレジで尋ねられる。コンビニエンス・ストアやスーパーマーケット、書店やコーヒーショップ、航空会社等々、多種多様な小売業やサービス業で、購買金額に応じてポイント制度を取り入れるところが増えている。多くの場合、1ポイント当たり特定の金額(例えば1円)に換算され、一定数のポイント…

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 正月休みが明けて出勤してくると思い出すのが、もう14~15年も前のことになろうか、新年早々、架空請求のメールに悩まされたことだ。「あなたはアダルトサイトを閲覧したのに料金を支払っていない。今すぐ、未払い分の6万円(程度であったと記憶している)を振込で支払え」という内容のメールであった。非常に不愉快で、どのように対応したものか困惑したものだった。  その…

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 前回は、ドナルド・トランプ氏のドア・イン・ザ・フェイス的特徴の強い常識破りの主張が、既存の政治体制に不満を感じている人々の関心を引きつけた可能性について考えた。ただ、最終的に勝利するほど多くの人々がトランプ氏に投票することになった理由は、よくわからないところが多い。というのも、その主張自体にかなりの矛盾や綻びが目立ち、批判され酷評されることが選挙戦最終…

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 ドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国次期大統領に選出された。EUからの離脱を支持するイギリスの国民投票の結果に続いて、可能性が低いだろうと予想されていたことが現実になった。2016年は「歴史的大誤算」が立て続けに起こった年として記憶に刻まれることになるだろう。  およそ次期大統領を目指す人にはあるまじき低次元の失言やゴシップに彩られながら、なぜトランプ…

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 前回までは、なにげない個人の行動が社会全体の変動に結びつく現象に注目してみた。今回は、個人が意図的に社会全体あるいは多数者の意見や態度を変えようとするとき、どのように行動することが効果的なのかについて考えてみたい。これは、社会のような大規模なものでなくても、所属する集団や職場を変えていこうとするリーダーとして行動するときにも参考になると考えられる。  …

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 前回は、少数のフリーライダーの行動を安易に見過ごしていると、周囲の人々がそれに影響されて、フリーライダーに追随するようになって、社会全体にフリーライディングが広がってしまう現象について紹介した。これはきちんと社会のルールを守り、社会の一員として責任を果たすことよりも、フリーライディングすることが、個人にとっては当面の利益は大きい場合の話であった。  で…

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 リオデジャネイロでオリンピックが始まっている。日本人選手の活躍に期待が集まるのは毎度のことであるが、今回は、都市の治安への不安も大きな話題となっている。実際に、アメリカの水泳選手4人がピストルを突きつけられて強盗の被害にあったことが報道されている。他にも日本からの一般旅行者に犯罪被害が多発していて、日本総領事館が改めての注意喚起を行っている(2016年…

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 6月23日に行われたEU(ヨーロッパ連合)からの離脱か残留かをめぐるイギリスの国民投票の結果に驚いた人も多かっただろう。2年半前の2013年1月にキャメロン首相が国民投票の実施を宣言して以来、離脱か残留かの二者択一の状況で、双方の支持意見が拮抗し、激しい論戦が繰り広げられていた。最後までどちらに投票しようか迷った有権者も多かったようである。迷いに迷った…

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 前回、群集の中では、お互いにどこの誰であるかがわからない匿名性の高い状況が生まれ、それによって、衝動的で感情にまかせた、非合理的な行動をとる傾向が高まる可能性について紹介した。具体的にはどのような行動が起こるのだろうか。こうした傾向を「没個性化(deindividuation)」と名づけた社会心理学者のジンバルドー(Zimbardo, 1969)が行っ…

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 ラッシュアワーの駅やバーゲンセールでにぎわうデパートのように、たくさんの人が集まっている群集の中にいると、知らず知らずのうちにある心理的な罠に陥ってしまうことがある。それは、「没個性化」と呼ばれる心理である。段階を追って説明して行こう。  群集の中にいると、そこにいるほとんどの人は、自分のことを「どこの誰なのか」知らないのだと感じて、匿名性が保証されて…

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 強い地震が熊本を襲った。戦国時代から偉容を誇って来た熊本城の石垣が次々に崩れ、雄大な阿蘇の麓をドライブするときに渡ったことのある阿蘇大橋が崩落してしまった映像に、筆者は呆然とし、自然の脅威を改めて思い知らされている。  メディアの報道からわかるように、被災した人々は不安や恐怖、寒さに耐えながら、互いに寄り添い支えあっている。水や炊き出しの食料を求めて長…

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 人間が他者に攻撃行動を起こす理由として、攻撃の本能が備わっているという「本能論」の視点と、イライラする欲求不満の発散が攻撃となって表れると考える「情動発散説」の視点を紹介した。しかし、もうひとつ重要な視点をおさえておく必要がある。それは、目的を達成するために攻撃が有効な方法だからこそ行うという功利的で戦略的な選択の視点である。  戦国時代の武将たちの戦…

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 信頼性の高い行動観察を実践していくためには、行動を正確に観察することに加えて、その背後で働いている心理についてもできるだけ正しく推測できることが必要になる。前回は、人助けをしている人の心理過程には、多様で、時に相反する思いが入り交じっている場合さえあることについて述べた。この他にも、表面的に観察できる行動の背後では、複雑な心理が働いていることが多い。 …

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